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ep3 目覚め

Auteur: 根上真気
last update Date de publication: 2026-02-04 12:17:05

第一部 

  【1】

「ど、どうしよう、このまま閉じ込められたままだったら......」

がっくりと膝をついた。もう何時間経ったのだろう。閉ざされた薄暗い部屋で目が覚めてから。時計もなければ窓もないので昼夜もわからない。ただただ途方もなく感じる。

「やっぱりこれって、閉じ込められているとしか考えられないよね。でも......」

中央に寝台があるのみの閑散としている部屋は、妙に広い。おまけに天井がやけに高い。牢獄というにはいささか様相が異なる。目立った汚れや埃も見当たらない。まるで掃除が行き届いているかのようだ。

「ここはどこで、ボクはいったい何者なんだろう......」

改めて確かめるように自らの身体を触る。長い髪の毛を撫でる。間違いない。女の肉体だ。

「まさか女装していたボクが、本物の女の子に生まれ変わってしまうなんて......」

それが自分にとって喜ばしいことなのかどうかはわからない。というより、そのことについてどうこう考える余裕がなかった。今はとにかくこの状況を何とかしなければならない。

「い、いったん整理しよう」

寝台に腰かけて深呼吸する。そして目覚めてから今に至るまでに理解したことを確認する。

「まず......ボクは生まれ変わった。あの時、刺されて死んだはずだったボクが。謎の女の子に生まれ変わってしまった。にわかに信じがたいけど。しかもボクには生まれ変わる以前の記憶がしっかりと残っている。火野虎白の記憶が」

荒唐無稽すぎる話だ。何度も繰り返し考えてみた。だけどそうとしか思えなかった。自分で自分の頭は大丈夫かと疑いたくなる。それなのに時間が経つにつれて現実感は増すばかりだ。

直感的な確信もある。転生したという確信。理由はわからない。ただ、魂のレベルでそう感じさせる何かがあった。

目覚めてから数時間は経ったであろう今では、冷静さも取り戻している。

「普通、生まれ変わるんなら、赤ちゃんから始まるんじゃないのかな......」

冷静になった分、ますます疑問も尽きない。それでも今は、わかることだけで何とかするしかなかった。彼女は頭を切り替える。

「結局、今のボクにハッキリとわかるのは、前世の記憶を持ったままで謎の女の子に生まれ変わり、部屋から出られない、ということだけか......つまり、ほとんど何もわからないのと一緒ということ」

フーッと大きく吐息をつく。それからすっくと立ち上がった。無理にでも気を入れ直す。まずはこの現状をどうにかしなければ、どうすることもできない。

「今、できることは限られている。だからそれをやるしかない」

先ほどから何度も助けは呼んでみた。だが、扉の向こうから誰かが来る気配はなかった。そもそも付近に人がいるかどうかも不明だ。それでも、これは定期的に続けた方がいいだろう。

「あとはやっぱり、もう少しこの部屋を調べてみるか......」

室内を見回した。自分が横になっていた寝台以外は何もない部屋だが、ひとつだけ明らかに異質なものが存在した。

「床にある、この幾何学模様......なんだか魔法陣みたいだな......」

不可思議に入り組んだ図形。寝台を中心として円状に描かれている。それを眺めていると、まるで古代の遺跡にいるような奇妙な感覚に陥る。そして何より不思議なのは......

「やっぱり、光っているよね......」

魔法陣がボンヤリと発光していることだった。そういう照明装置なのか知らないが、おかげで暗黒に支配されずに済んでいた。室内は仄暗く照らされている。

「やっぱり、これになんの意味もないとは、とても思えないよな......」

床に膝をつき、そっと魔法陣に手を伸ばして触れてみた。その時、彼女は心身に何かが疾ったような気がした。快でも不快でもない、今までに感じたことのない不思議な感覚。例えるなら、真っ暗闇の世界にパッと蝋燭の炎が灯ったような感覚。あるいは死の淵を彷徨っていた者の胸がドクンと脈打つような、そんな感覚であろうか......。

「な、なんだろう、今のは......」

床から手を離し、掌を見つめる。まるで自分の中で、得体の知れない何かが目覚めたような......

「ん?」

何かに気づいて顔を上げた。何処から震動を感じる。これは......と閃く。

「地震!?」

そう思ったのも束の間、突如として足元の魔法陣から凄まじいまでの紅き閃光が惑星爆発の如く噴き上がった。

「なんだ!?」

何が何だかわからない。ただひとつだけハッキリしているのは、それがただの赤光ではなく、激烈な光を放つ深紅の炎だということ。

「あああ!!」

炎は周囲一帯を包む。何もかもを劇的に吹き飛ばす。

それは天災か超常現象か。あるいは宇宙的神秘か。荒々しくも神々しい、天に向かって強大な深紅の炎柱が壮絶に立ち昇った。

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